どうも、「パレスチナ連帯運動と歴史修正主義の親和性」というような形での批判があるようで、こんなのを書いた以上は説明的な事を展開しなきゃならんのだろうなあ。
http://black.ap.teacup.com/despera/405.html
これについては「空耳アワーか!」というので決着かと思うのだが。
サイモン・ウィーゼンタール・センターについては、アメリカ国内では、パレスチナ支援の集会が行われると毎回必ず「反ユダヤ主義だ」っていう抗議をする団体であって、むしろそっちがメインである。
「ガス室は無かった」という記事で、文藝春秋社に追い込みかけた一件で「反ファシズム系」の団体かというような認知のされ方をしているが、むしろあの一件では日本ではファシスト系の人士の中にイスラエル支持のウイングを拡げたのであって、基本的にはイスラエルのシオニズム政策に奉仕する団体である。
でね、前にも言及した本だが、
http://www.amazon.co.jp/dp/4062140098/
イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 1
ジョン・J・ミアシャイマー (著), スティーヴン・M・ウォルト (著), 副島 隆彦 (翻訳)
http://black.ap.teacup.com/despera/306.html
副島 隆彦 (翻訳)ってあたりで、まあこの人は「必ずなにか間違った事を言う」という器用な才能を持つ人で、副島 隆彦 (翻訳)という時点で全然ダメだという判断をする人がいてもまあそれは致し方が無いという気もせんでもないが、しかしこの翻訳では副島隆彦の特異な才能が発揮されているわけではない。
著者の二人は、「文明の衝突」のハンチントンの弟子筋にあたる奴で、基本は「アメリカの国益にとってイスラエル支持は有益か?」という線で書かれている。
でね、諸々のイスラエルロビーが、この著者を「反ユダヤ主義だ」つって宣伝してまわり、方々に「読まずに批判」の人がいっぱい発生している状況だが、はっきしゆって、これは読んだ上で批判しなきゃまずいっすよマジで。
これは「ユダヤの秘密組織が世界を支配してるんだ」みたいな、太田ドラゴン将軍や西岡センセーの類の妄想系の話を排した上で、日本でゆうたら土建屋ロビーとかのような形で力を持っている「イスラエルロビー」が、どのようにアメリカ合衆国の国内政治権力に対して影響力を持ち、それを行使しているのかというのを解明しようとしているのである。
で、それはやはり、イスラエルがガザで虐殺を繰り広げている最中に、アメリカ合衆国からイスラエルに大量の武器が売却・搬入されたり、アメリカ合衆国議会で「イスラエル支持」の議決が圧倒的多数の支持で可決されたりとかいう異様な現象の説明としては、最も説得力のあるものなんですよ。
マジで、だまされたと思って読んでみた方がいいですよ。もちろん、著者の政治的立場を割り引いた上で。
で、歴史修正主義について、です。
イクバール・アフマドというパキスタンの左翼の人がいて、
http://www.amazon.co.jp/dp/4872337190
これはエドワード・サイードの「政治の師匠」にあたる人です。
で、この本すっげえおもしろくて、大変に影響を受けたのですが、この中で「歴史修正主義」が新たな可能性としてすげえ肯定的に書かれていて、かなり驚きました。
まあ書かれた時期の問題もあるだろうけど、どのくらい確信犯的に書いているのかがよくわかんないんだが、「イスラエルの政治的資産を覆すもの」という扱いだった。
で、結果的に歴史修正主義の連中が果たした役割はご存じの通りなわけだが、ああいうものを肯定的に取り上げなければならない状況ってなんだろうというのがずっと引っかかっている。
で、これって80年代的な文脈でいうと、「第三世界解放闘争とスターリン主義」という問題の扱われ方とすげー似ていると思うのな。
帝国主義の戦争圧力に抗して必死で闘っている第三世界人民に対して、「あれはスターリン主義だからダメだ」とか、一体誰がどういう立場で言えるのか、というあれである。
これはスターリン主義への無批判な礼賛とか、第三世界解放闘争の丸ごと切り捨てとか、そういう変なもんをいっぱい生み出した。
で、これは冷戦構造の崩壊以後は、チベットとかビルマとかチェチェンとかの「あれは反共主義だからダメだ」という、これまた変なもんを同じ構造の中で生み出し続けている。
カンボジアの自衛隊派兵の時なんかもう無茶苦茶で、左翼の業界はポルポト支持だのフン・セン支持だのに分かれて論争し、UNTAC支持なんていうわけのわからないものまであった。
で、これって、まあつまらん結論だが、「そこの当該民衆の利益とはなにか」ということを考え、それに沿った行動をするという以外には道はないわけなのだが。
結局のところ、「パレスチナを見捨てたのは誰か?」という問いに帰ってくると思いませんか?
*追記
http://black.ap.teacup.com/despera/407.html
訂正入れました。
イクバール・アフマドが「ガス室は無かった」とかゆってるアホどもを絶賛してたなんて話じゃありませんでした。すみません。

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