戦争がひとつの経済活動であるということ、つまり、戦争やっている奴らは、別に暴力が大好きだからとか死体フェチだからとかゆう理由で戦争を仕掛けているのではなく、その国家なりなんなりが、戦争によって「トクをしよう」と考えてやっているということを踏まえれば、この一連の「対テロ戦争」によって生まれる「アメリカの利益」というのは一体なんなのだろうか?
例えばアフガン戦争のときは、天然ガスを運ぶパイプラインの確保、という事が言われていた。パイプラインなんか全部の距離を防衛できないので、その地域を「安定化」させることが必要なのだ、というわけだ。
イラク戦争の場合は、「石油のための戦争」という事が言われた。
ひとつは、アメリカの要求のままに原油の生産調整をしてくれる産油国はサウジアラビアだが、もう一個、「便利な蛇口」をアメリカは必要としたのだ、という話。
もうひとつは、フセイン政権が原油の決済をドル建てからユーロ建てに変更しようとしたことだ、という話。
で、その結果は現時点でどうなっているのか。
アフガンは親米政権を作ったものの、その実効支配は首都周辺にしかおよんでおらず、「地域の安定」などとは程遠い。
イラクにいたっては「便利な蛇口」どころか、地雷原になってしまった。
どちらも、アメリカは「どの段階で手を引くか」という議論になっているような状況である。
戦争によるアメリカ合衆国の収支決算は、損益分岐点をはるかに下回り、不良債権の塊を背負ったことになる。
で、ここからがわからない。
あんだけ悲惨な失敗に終わったにも関わらず、なぜ、「次はシリア」「次はイラン」なんて話が出てくるのか?
我々は、「ネオコン」という奇矯なイデオロギー集団が、上記のような経済的利害関係を、「中東の民主化」という文脈に書き直して戦争イデオロギーを形成してきたというふうに考えてきた。
しかし、ネオコンの連中はおおむね没落したんじゃなかっただろうか?いまさら誰がネオコンの寝言を聞くのだろうか?
この辺の謎を解き明かすものとして、「イスエラル・ロビーのロビー活動の成功のしすぎ」という側面が注目されているようだ。
「イスラエル・ロビー」とか言うと、またぞろ「ガス室はなかった」とかいってるアホどもがしゃしゃり出てきたりして、たちまちのうちにやれイルミナティだ300人委員会だ、挙句には「爬虫人類の陰謀」だなどというアホの世界に議論が落としこめられてしまうことで、実際に存在する「利益集団としてのイスラエル・ロビー」というものの姿がまともに語られないという困った状況がある。
んで、こういう状況は明らかにイスラエル・ロビーにとっては有利に作用している。「イスラエルロビーについて言及する奴はネオナチだ」「陰謀論者だ」「アホだ」というレッテル貼りが非常に説得力を持つようになってしまうからである。
まあ、そっちの方面も、状況を受けて、なかなかえらいことになってるようだが。
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こういうんじゃなくて、
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イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 1
ジョン・J・ミアシャイマー (著), スティーヴン・M・ウォルト (著), 副島 隆彦 (翻訳)
、翻訳が副島隆彦ってあたりがヤバげだが(W、これはイスラエル・ロビーを「普通の圧力団体」として捉えようという試みである。
この著者の2名はおどろいたことに「文明の衝突」のハンチントンの弟子にあたるらしい。あの辺の人たちって、てっきり戦争イデオロギーの生産のほうに関わっている口かと思っていたよ。
んでね、「アメリカ合衆国でのロビー活動」が世界をデザインしてしまう、というような事が実際におこるのかどうか、というあたりが問題なわけだが。
それは「アメリカ合衆国が世界帝国として成立した現時点ではありうる話だ」というべきだろう。
世界帝国というもんではそういうことが往々にして起こる。
クレオパトラがカエサルを丸め込んだらローマとエジプトの同盟が成り、カエサルが暗殺されたらエジプトが攻められてローマ属領となるというようなことが、その舞台が世界帝国である限りに於いて、起こりうる。
あるいは、クレムリンでの権力闘争の結果が各国共産党に及ぼした影響とかを考えてもよいだろう。
極めて侵略主義的で植民地経営を行っているイスラエルという国は、明らかに周辺アラブ諸国を攻め滅ぼしたいという願望を持っている。その願望をアメリカ合衆国の政策に反映させることに「成功しすぎた」結果が、この一連の「終わらない対テロ戦争」を作り出してきたものなのではないのか。
いずれにしろ、イスラエルの動向に注目しなければなるまい。

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