フレッシュプリキュア EAS〜その血塗られた青春の日々
第7話 同志
横浜、とある別荘に集いしは
白髪の少女
木製人間:渡瀬メグル
隻腕の女:山本ミサキ
さらに・・・
「在原アユミ」
鍛え上げられた肉体を誇るマダラ胴着の女はそう名乗った
「江ノ本ユウ」
白い着物にリボンを付けた特徴的な衣装の女はそう名乗った
「遠路はるばるようこそ」
これにて別荘に集いし女は5人
残るはあとひとり
「時間も守れない様な奴は信用ならないねェ!いらねーよ、そいつ。5人いれば十分っしょ」
在原がそう言うと、渡瀬はこう言い返した
「そういえば、今夜というだけではじめから時間は決めた無かった。」
「・・・ズサンですネェ」
白髪の少女は苦笑い
「・・・馬鹿ばかりか、ここは。」
山本はあきれてため息をつく
「私なら既にここに来てるよ」
「「「「!!!!!」」」」
白髪の少女以外の4人は天井裏を睨む
僅か、本当に僅かだが人の気配がしていた
「・・・天井裏ですカ。これまたオツな好みデ」
「千倉ナオよ。よろしく。」
「何がよろしくだ!降りてこい!ったく天井裏なんてお前、本当に人間なのか、コラ!」
天井に向けて睨みをきかせる在原だったが、
「そうだよ!人外じゃないだろな!」
「・・・・・」
木製人間:渡瀬のその一言で在原の趣が一気に削がれた
千倉は「衆目に姿を晒したくない」とだけ言い返すだけだった
「まあ、いいじゃないですカ。ともあれこれで『天誅人羅刹』に恨みを持つ復讐者が揃いましタ。
・・・あたし達は『六人の同志』デス。」
白髪の少女は右手の中指でサングラスを持ち上げてさらに説明を続ける
あたし達6人、今は『同志』ですが、じきに競争相手にある間柄ですからネ
今、『羅刹』は『せつな』と己を偽り、四ツ葉町でのうのうと暮らしていまス
このまま『羅刹』は『あくまでも今の自分はせつなだ』と開き直られたままでは、例えどんな圧倒的な力でぶち殺した所でのれんに腕押シ。
復讐は達成出来ませン
復讐とは、まず相手に因果応報を思い知らせるコトで初めて始まりまス
あたし達がこうして集まった目的は力を合わせ、奴を追い詰め、己の過去の罪を再び認識させる為
それが出来たら6人の同志はそこで解散
そこ後復讐という罪を与えるのは早い者勝チ
・・・だって、皆止めの一刺しは自分の手で下したいのでショ?
「なるほどな・・・」
髪を書き上げる山本
「要するにこの中で一番強い者が止めをさせるってコトだな。」
拳を鳴らし、気合を入れる在原
「ならば異論はない・・・」
あくまでも冷静な江ノ本
「で、手筈の方は」
天井裏からの千倉の問いに、白髪の少女は答えた
「それは既考えてありまス。これはわたしが上に立って皆さんを指揮するのではなく、一同に集めた責任を果たすという事ですかラ
では、説明しましょう・・・」
10分後、山本、在原、江ノ本、そして千倉の4人が別荘から出て行った
窓から、去り行くものの背中を見つめる少女と渡瀬
「上々だな。これで同志という名目のまま、事実上他の4人を意のままに動かせる」
渡瀬がにやりと笑う
「そうですネ」
「最後の一刺しは自分の手で下せるというのが効いたな。『羅刹』を殺す事を復讐の目的としている連中にはたまらないエサとなった。」
「何から何まで協力感謝しまス。」
「何、構わんよ。私もお前と同様・・・『羅刹』を殺す事を復讐の目的としているわけではないからな」
「そうです。所詮死などただ一瞬の痛み!それしきの事ではお兄ちゃんの無念もあたしの恨みも晴らされない!!」
先ほどまで至って平静を保っていた少女の表情が、修羅のものに一変した
「『天誅人羅刹』を!あたしたち兄妹が味わった同じ『生き地獄』につき落とす!!
それが、セーラ・ベッショの究極の復讐!!!」
翌朝
せつなの部屋に美希がいた
住む家を失った昨晩から、せつなの部屋でふたりで寝ていた
「・・・結局のところ、警察の結論は、私の店の怨恨ではなく、テロ組織の試射か、誤射扱い
情けない!やっぱ連中は頼りにならないわね!」
「仕方ないわ。事情をしらないんだから、無理ないわ。」
「で、その事情。どうする?ラブ達にも話しておく?」
せつなは一瞬、考えたが結論は変わらなかった
「いや・・・やめておきましょう。ラビリンスとの戦いでみんな頑張ったわ。やっと平和が手に入ったのよ。この上、更に余計な心配を掛けたくない。」
「背負い込むわね。」
「・・・美希に話が出来るだけでも随分と楽よ。ありがとう。」
「お役に立てて嬉しいわ。」
「・・・今回の相手は復讐という強固な精神で向かってくる者達。その点で恐らくラビリンス軍以上の力を発揮する者もいるはず。
ならば、危険な橋は避けるべき。ラブやブッキー、タルト達は戦いと無縁の方がいい。もちろん、美希あなたもよ。」
「せつな!!」
美希が勢いよく立ち上がった
「別に弱点扱いしているわけじゃないの。これは私の私闘よ。あなたを巻き込めないわ。」
「そう・・・でも、これは私の私闘でもあるわ!」
「あなたの?」
「家を破壊されて黙って泣き寝入りするほど、この蒼乃美希!安い女じゃなくってよ!」
「美希・・・わかった。けど決して深入りはしないで!」
「OK!そうと決まれば話は早い。せつながこの街で懇意にしている所は、ここ(ラブの家)、山吹動物病院、カオルちゃんのドーナツ屋、ミユキさんの家の4箇所。
つまり、私とせつなの二人でブッキーの家とミユキさんの家を護衛していれば完璧だわ!」
「カオルちゃんのドーナツ屋は・・・あの人なら大丈夫か」
「でしょ!」
美希はウインクで答えた
その直後だ
ドンドンドンドンドンドン・・・
「ラブが来た!」
「美希、早く地図を隠して!」
トントン・・・ノックの音だ
「せつな、入るよ」
ラブがドアをあけると、せつなと美希は横に並んで
ズズーッと紅茶をすすっていた
いかにもわざとらしい
「それで?隠した地図で何を話し合っていたの?」
ギクッ!
「いや、何をするって別に地図ってただ眺めているだけで結構楽しいじゃない」
せつな苦しすぎる言い訳
「ふーん。」
案の定、ラブの疑念は全く晴れない
「というのは冗談。今夜あたり、ちょっとイケメンでも探しに街に繰り出そうと思ってね」
「ちょ!?美希!」
「ふーん・・・まあいいけど、変なのに引っかからないようにしてね。」
(美希ぃーっ!)
せつなは美希を睨みながら小声で言う
(いいじゃないの。ラブの話を逸らすには男の話が一番なのよ。自分だけ良い子ぶって。)
美希も小声だが、次でトーンを上げた
「じゃあ、あたしはブッキーの家にいってくるわ。
ママに会いに!」
「え、ええ・・
気をつけてね。」
「・・・・・・。」
美希に続き、ラブもせつなの部屋を出て行って自分の部屋に戻った
畳のベッドに身体を預ける
・・・やっぱりおかしい
絶対何か隠してる
せつなの事だから、多分私たちに余計な心配かけまいとしてるんだと思うけど・・・
けど・・・

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