若葉台公園に展開してる移動型店舗:タコカフェ
普段は藤田アカネと九条ひかりの2人で経営している
だが、今回ひかりは四ツ葉町へ出かけた為、幼い『従兄弟』ひかるが手伝いをしていた
ピタリ!
皿を運ぶひかるの動きが止まった
じっと北の空を見つめる
(まさか・・・プリキュアが・・・光の戦士が負けた・・だと・・・?さらにこの禍々しき気配は・・・)
その眼差しの強さまるで・・・
「ひかるー?重い?」
「あ・・・!」
『保護者』アカネの声で我に返った
「アカネさん・・・うん・・・大丈夫だよ」
にっこり笑って皿運びを続けた
(奴か・・・となるとプリキュア達に勝ち目は・・・無い!)
ひかるの心は四ツ葉町へと向いていた
某中学サッカー部、練習の帰り道
「!!!」
とある少年は何の前触れも無く北の空を見た
「ど・・・どうしたんだよ!突然」
「ご・・・ごめん。さっきすれ違った女の子のスカートがふわりとしたような気がしてさ」
「マジか!ど・・・どどどこ!?」
「もうとっくに終わったよ」
「なーんだ!」
「ふっ!」
「笑うなよ!お前は見たんだろ!」
「いや・・別に!」
「その済ました笑い方!こぉのぉエロ澤キリヤ!」
「なんだよエロ澤って!」
エロ澤こと入澤キリヤはサッカー部次期キャプテン候補だ
彼の顔は笑っていたが、心は北の方角から動くことはなかった
(何かが呼んでいる気がする・・・僕を呼ぶ何かが・・・)
「はあ・・はあ・・はあ・・!」
変身したまま走るシャイニールミナス
他のプリキュア達に事態を伝えなければ!
『キュアブラックとキュアホワイトが敵にやられた』という緊急事態を
さらに『敵は光の力を使う悪だ』という『史上最悪の敵』という事を
「はあ・・はあ・・はあ・・!」
早く他のプリキュア達を集めないと状況はますます不利になっていく
どれほど走っただろうか?
やがてルミナスの視界に伝説のスーツを身にまとった3人の少女が見えてきた
誰かと戦っている!
「あ・・・あれは!!」
少女達が戦っているのは、『光の男』だ!
走るルミナスの目に入ってくる情報は、一言で『最悪』だ
少女達の攻撃がことごとく男の体に吸収されていく
徐々に力を奪われ、先ほど青色の少女が体内に取り込まれてしまった
無念さだけを伝える地に刺さった緑と赤のフルーレ、そして
ジャキィィインッ!
今、突き刺さった青のフルーレ
「はあ・・はあ・・はあ・・!」
漸く叫べば声が届きそうな位置まで来れた
「ドリームさん!レモネードさん!逃げてください!一度態勢を立て直しましょう!」
「あなたは・・・ブラックさん達のお友達の・・・!」
ルミナスの声に振り向いたのはキュアレモネード
「逃げるって・・・どういう事!?」
シューティングスターを中止し、ルミナスの前に立つキュアドリーム
ルミナスはふたりに『事情』を話し始めた
「みんなやられました・・・なぎささん、ほのかさん・・・」
ルミナスは俯いた
「かれんさん・・・こまちさん・・・」
レモネードも肩を落とす
「りんちゃん・・・」
ドリームは拳を握り締める
「光の悪ウラーヌスとその手下を倒すには、より強大な正義の光の力をぶつける事!
それには出来るだけ多くのプリキュアの力を結集させないといけません!」
「それで態勢を立て直すと言ったのですね!」
「ええ・・・それと・・・」
ルミナスは知っている
もうひとつ策はあるのだ
だが、それはあまりにも現実離れし過ぎている
出来やしない事は話すべきではない!
まして、プリキュア5人が既にやられてしまったこの絶望的な状況では!
極限の戦争の中で、女王の勘が冴え渡る
「ルミナスの言う事はわかる!けど・・・!」
キュアドリームが両手に桃色の闘気を集めはじめた
シューティングスターの準備だ
「ドリームさんも・・・仲間の為に・・・ですか?」
ルミナスの手はわなわなと震えていた
「そうだよ!」
ドリームは勇ましく返事
「・・・同じ事を言ってほのかさんはやられました・・・
あなたの友達を思う気持ちが・・・この世界を破滅へと導くかもしれないのに・・・!」
珍しく語気を強めるルミナス
「ルミナス・・・」
一瞬たじろぐキュアドリーム
「ルミナスさん!いくらなんでもそれは言いすぎじゃないですか!
ドリームは・・・のぞみさんは友達が目の前でやられてしまったのですよ!」
レモネードが助け舟を出したその時
ルミナスは泣いていた
「私だって・・・辛いんです・・・!」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ・・・・
3人に近づく『光の男』
登場時よりも明らかに大柄になっている
「のぞみさん、来ます!」
「うらら、ここはっ!」
拳を構える2人
「ほう!来るか!!」
ニヤリと笑みを浮かべる『光の男』
不安な表情を浮かべるルミナス
「はあっ!」
「ええーーーーーいっ!」
ふたりは構えたまま『光の男』に突っ込んでいく
だが!
シュンッ!
ふたりは真横を風のように駆け抜けていった
『逃げ』を選択したのだ
「何ィッ!」
思わぬ行動に振り向く『光の男』
表情が綻ぶシャイニールミナス
キラリ
一瞬、レモネードの手が光ったように見えた
さらに!
シュゴオオオオオ・・・・
ドリームの両手を桃色の気流が巻いている
次の瞬間!
ギュオオオンンッツ!!
『光の男』が輝くチェーンに全身を縛られていた
「何ッ!!!」
極限まで細くしたプリズム・チェーンがその正体
「こ・・・こんな糸のようなものがアアアッ!!」
体を捻り、強引にチェーンを引きちぎろうを試みる
ブツッ!ブツツツツツツツツツツ!!
糸が切れずに『光の男』の皮膚が切れる
滴る鮮血の色は、赤
「きょ・・・極限まで細くしたプリズムチェーンはそう簡単には切れません!」
巨体と綱引きをするレモネードの腕からも血がぽたぽたと落ちる
「そして!!」
キュアドリームがくるりと振り返り、踏み込む!
超至近距離からの!
「プリキュア・シューティングスター・ストライク!!」
ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!
力の激突で爆発と衝撃が発生した
後輩の鮮やかな奇襲に目を丸くするルミナス
(ひょっとしたら・・・勝ったのかも!?)
期待が膨らむ
「・・・やりましたね!」
爆発の向こうに声を飛ばすレモネード
「のぞみさ・・!?」
ぐおおおおおおおおおおおおん!
先輩の名前を呼ぼうとした瞬間、レモネードの体は宙を舞った
「!!!!」
その体の行き先は爆発の中
中からプリズムチェーンごと引っ張っているのだ!
「・・・そ・・そんな・・・まさか・・・!」
青ざめるルミナス
しかし、呆然としていてはいられない!
「うららさんっ!」
引っ張り込まれるレモネードの足を必死に掴もうと試みる
だが・・・!!
スカッ
僅か・・・指間接一つ分だけ届かなかった
キュアレモネードは爆発の煙の中に消えていった
煙が晴れる・・・
そこには、さらに大きくなった『光の男』だけがいた
キュアドリームとキュアレモネードの姿はどこにも無かった
「これは食えんわ!」
『男』は笑いながら口から2本のフルーレを吐き出した
ガシャ
ガシャ
膝を付き、頭を抱えるシャイニールミナス
「なぜ・・・みんな・・・死地へと向かっていくのですか・・・」
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ・・・
絶望したルミナスに近づく足音
『光の男』だ
「貴様の強大な光の力・・・それさえ手に入れればウラーヌス様は完全に復活する!」
キッ!
涙目でルミナスは『光の男』を睨む
「ウラーヌス・・・先代『光の園の王』・・・!!何の理由でプリキュアを!」
「ウラーヌス様は全てのパラレルワールド支配の仕切りなおしを始めたのだ!」
「その為に邪魔な正義の光の力を持つプリキュアを・・・!」
「流石だなシャイニールミナス。いや・・・現『光の園の女王』!」
「・・・・」
睨んだまま、ルミナスは無言
「お前達が随分と活躍してくれたお陰で我等の天敵が減った。ありがたい事だよ」
「闇の力を持つ者たち・・・」
「ああ!!光と闇は常に対になっている。お前達の“闇狩り”が我々にとってとても都合がよかったのだ。」
プリキュア達が平和と未来の為に行ってきた行為が、ここにきて仇となった
『光の男』は笑いながらこう締めくくった
「ヒトの持つ絆の強さが・・・勝てぬ相手に挑むのだ」
「うっ・・・!」
ルミナスは反論できない
奴の言った事を一瞬でも“思ってしまった”自分に負い目を感じて
「勝てぬ相手に勝負を挑むのは『勇気』では無く・・・」
ぐわあっ・・・と大きく右腕を振りあげる『光の男』
「『無謀』と言うのだよ!!!ルミナス!!!」
勝ち誇った顔と一緒に振り下ろした
ルミナスを『獲る』つもりだ
「・・・なぎささん・・・ほのかさん・・・っ!」
ルミナスは諦めて、まぶたをぎゅっと閉じた
その時!!
ルミナスの頬をひんやりとした、いや痛いほどの冷気が通過した
カシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!
「えっ!!?」
ルミナスが目を開けると・・・
氷の柱が『光の男』の右腕を凍てつかせていた
「逃げるわよ!」
「はいっ!?」
突如耳元に少女の声
さらに
ビューーーーーーーーンッ!
驚くべき跳躍力で、あっという間に光の巨人が小さくなり・・・見えなくなった
ルミナスが横を見ると、自分を抱えたまま跳躍する紫髪の少女がいた
「あなたは・・・?」
「パルミエ国召使いミルク、またの名を・・・
ミルキィローズ!」
つづく

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