シーン1:スペア
キラッ!
キラッ!
夕凪町の真昼の空に流星が二つ
・・・・・・ドオオオオオオオオオオオオオオオオン!!
・・・・・・ドオオオオオオオオオオオオオオオオン!!
その後、落下音
「な・・・なんの音っ?」
パンパカパンの看板娘日向みのりが庭の近くで発生した大きな音で、外へと飛び出してきた
「あ・・・あれ?満お姉ちゃん、薫お姉ちゃん?」
みのりが驚くのも無理はない
厨房でパンを作っていたはずのふたりが自分よりも先に、外にいたのだから
「どうしたのみのりちゃん」
青髪の少女、霧生薫は表情一つ変える事無く尋ねてきた
「なんか今爆発みたいな音がしたの!」
「気のせいじゃないかな?」
赤髪の少女、霧生満は彼方をみたままそう呟いた
「気のせい?」
みのりの問いに薫が膝を曲げ、視線を合わせて答える
「コロネが何かをひっくり返したとか・・・」
「コロネが・・・?あ、そいうえばコロネがいない!薫お姉ちゃん、探してくる!」
「今日は暑いから気をつけてね」
「うんっ!」
みのりは元気よく手を振って、庭からカフェテラスの方向へと
見届ける薫
背中を向けたままの満
「満、みのりちゃん・・・行ったわよ・・・」
「そう・・・」
薫のその一言で満は、ガクッっと膝から崩れ落ちた
手に大事そうにボロボロの塊を持ちながら・・・
満の目から涙が溢れる
「クリスタルコミューンが・・・こんなに酷い状況で私たちの元へ・・・」
激しく傷ついたコミューンには、精霊の姿は無く空っぽの状態だった
「・・・・・・私たちの元にコミューンが返ってきたという事は・・・スペアの出番がきたという事」
薫はあえて、直接的な表現は避けた
はっきり(本体が死んだと)言ってしまうと、それを認めてしまいそうで、怖かった
彼女の右手にも、ズタズタのクリスタルコミューン
「満・・・行くわよ」
「ええ、薫。いわれなくても!」
満が涙を袖で振り切って立ち上がった
満が叫ぶ
「ムープ!」
薫が叫ぶ
「フープ!」
すると・・・
「ムプー!!」
「フプー!!」
月の精霊ムープ、風の精霊フープが空からふたりの側へ
「「今こそクリスタルコミューンを真の姿へ!!」」
天高く傷ついたコミューンを掲げると、満のコミューンにムープが、薫のコミューンにフープが飛び込んだ
パワワワワワアアアアアアアアアアアアアア・・・・
再びコミューンに生命が宿る
暗黒のオーラを放ちながら、見る見るうちに傷が塞がれていく
シュウウウウウウウ・・・・
クリスタルコミューンは完全なる形に復活した
「行こう!」
瞳に闘志を蘇らせた、満がコミューンを手に構える
「・・・ええ!」
決意新たな相棒を見て薫は、ただ頷いた
満と薫は、カフェテラスの方向を見つめた
・・・誰もいない
気温38度の状況で、外でティータイムをする変わり者などいなかった
「みのりちゃん、必ず咲を・・お姉ちゃんを・・・連れて帰るから!」
薫の体から、発せられたのは、暗黒闘気!
「舞・・・一緒にこの街に帰ろう・・・」
満の体からもほとばしる暗黒闘気!
オーラの凄まじさで体が宙に浮く!
宙で繋がるふたりの手
暗黒闘気が両翼と化す
「「必ず・・・4人で戻る!!」」
黒き翼が、熱を帯びた空を飛ぶ!
その姿は、まさに翼竜(ワイバーン)!!

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