2013/3/25

こころ改版(新潮社) (販売店:楽天ブックス)  小説

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■青空文庫から『こころ』を一部抜粋
 私の疑惑はまだその上にもあった。先生の人間に対するこの覚悟はどこから来るのだろうか。ただ冷たい眼で自分を内省したり現代を観察したりした結果なのだろうか。先生は坐(すわ)って考える質(たち)の人であった。先生の頭さえあれば、こういう態度は坐って世の中を考えていても自然と出て来るものだろうか。私にはそうばかりとは思えなかった。先生の覚悟は生きた覚悟らしかった。火に焼けて冷却し切った石造(せきぞう)家屋の輪廓(りんかく)とは違っていた。私の眼に映ずる先生はたしかに思想家であった。けれどもその思想家の纏(まと)め上げた主義の裏には、強い事実が織り込まれているらしかった。自分と切り離された他人の事実でなくって、自分自身が痛切に味わった事実、血が熱くなったり脈が止まったりするほどの事実が、畳み込まれているらしかった。


■『こころ』などの著作権が切れている作品は青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)でも読むことができます。

2013/3/15

<『創作』などを収録> 芥川龍之介全集(第1巻)新版 [ 芥川龍之介 ](販売店:楽天ブックス)  小説

販売店の商品ページ⇒芥川龍之介全集(第1巻)新版 [ 芥川龍之介 ]

■目次
バルタザアル/大川の水/「ケルトの薄明」より/未来創刊号/老年/紫天鵞絨/桐/春の心臓/薔薇/青年と死と/客中恋/若人/クラリモンド/砂上遅日/ひょつとこ/松江印象記/羅生門/松浦一氏の「文学の本質」に就いて/鼻/編輯後に/孤独地獄/父/虱/酒虫/翡翠/校正後に/仙人/薄雪双紙/野呂松人形/芋粥/猿/創作/校正後に/手巾/出帆/ジアン、クリストフ


■青空文庫から『創作』を一部抜粋
 僕に小説をかけと云ふのかね。書けるのなら、とうに書いてゐるさ。が、書けない。遺憾ながら、職業に逐はれてペンをとる暇(ひま)がない。そこで、人に話す、その人が、それを小説に書く。僕が材料を提供した小説が、これで十(とを)や二十はあるだらう。勿論(もちろん)、有名なる作家の作品でね。唯、君に注意して置きたいのは、僕の提供する材料が、大部分は、僕の創作だと云ふ事だよ。勿論、これは、今まで、人に話した事はない。さう云ふと、誰も、僕の話を聞いて、小説にする奴(やつ)がないからね。僕は、何時(いつ)でも、小説らしい事実を想像でつくり上げて、それを僕の友だちの小説家に、ほんたうらしく話してやる。すると、それが旬日(じゆんじつ)ならずして、小説になる。自分が小説を書くのも、同じ事さ。唯、技巧が、多くの場合、全然僕の気に入らないがね、それは、まあ仕方がないさ。


■『創作』などの著作権が切れている作品は青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)でも読むことができます。





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