変化は戸外で進んでいる
注目されるボタン
05秋冬のレディースマーケットではミリタリーブームの流れからメタルボタンが注目され、ボタンの存在がトレンドを補完する重要アイテムとして再認識される契機になったことと思う。続いて06秋冬では、トラッド&プレッピーのトレンドが予測されたことからメンズマーケットでもボタンが注目されている。そして07春夏ではマリーンというボタンがキーポイントとなるトレンドも来ている。
私は先月行なわれた『日本ボタン大賞』(主催・日本ボタン協会)で審査委員長を務めさせていただいた。
第14回を迎えた今回は、マーケットがボタンに注目しているという背景もあったためか、前回より約3割増、400点以上の出品をいただいた。
今回の応募では、いくつかのファッショントレンドを意識したデザインの作品が目立った。中でも多かったのは「ロハスブーム」でナチュラル(天然・自然)志向が注目されていることを受けて、天然素材を使ったボタンである。グランプリの栄冠に輝いた作品もナチュラル素材使いの、とても完成度の高いものであった。色違いの3点セットで揃えるあたり、見せ方の工夫も良かった。
また、ジャポネスク&オリエンタルブームの影響で、日本調・和風テイストの作品が今回多く出品されたことも注目すべき点では無いだろうか。
もう一点、私が審査委員長特別賞に選ばせていただいた作品は「ラグジュアリー」という、今最も注目されているトレンドをテーマにしたものであった。
審査会の舞台裏
実は、今回から審査方針が変わっている。私は「作り手が何をイメージし、どういうプロセスで物作りしたか」ということを積極的に評価ポイントへ取り入れようと審査会に提言した。
一般には知られていないが、ボタン製作の現場は素晴らしい技術と努力の集積である。こういうことも評価の対象として表彰することに意義があると思うのだ。その技のベースあってこそのアイディアの発露である。
ラグジュアリーというテーマは、まさに技術のベースとセンスが問われるものだ。
根塚氏の作品にはそれが明確に出ている(写真を御覧いただきたい)。
映画の「パイレーツオブカリビアン」をヒントに、羅針盤をイメージしたデザイン。蝶番や剣針などの細かい意匠はオリエンタルチックにまとめ、クリスタルを巧く使ってラグジュアリーテイストを打ち出している。
表彰式後、本人に確認したら東京で長年商品開発に携わっているキャリアの方だった。光り物を使ってもごてごての過剰装飾にならず、品好く落としどころを心得ているのはキャリアのなせる業(わざ)か。
さらに話を伺えば、東京の磁場の中でさまざまの文化に触発されて、あのような作品が生まれたものらしい。
もっと遊(学)ぼう
以前から申し上げていることだが、デザインクリエイトは服飾からだけの発想では細(ほそ)る。
ファッションデザインはアパレルだけの特権ではない。ファッションにおいてはインテリアから映画音楽、インターネットのWEBデザインに到るまで、人間の生活を豊かに彩っていこうとする意志一つ一つの集積によって潮流が生み出されていく。
その流れにいち早く反応したセンスがファッションを生み出し、時代のトピックとして名を刻む。
アパレル関係のデザイナーには、もっと遊び(勉強)が必要だ。
流行を先取りするつもりでヨーロッパの展示会をビデオで分析することよりも、あなたが生きている今、呼吸している時代、この国の中であなたが享受できる文化について、あなた自身が秤となって確かめてみる実感の方がよほど大切だろう。
リアリティの無い作り手から、人を魅了する作品は生まれない。
(デザインルームヒロセ、チーフディレクター)
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