都市銀行の統廃合は、色々な形で生活の一部に変化をもたらしている。
銀行は統廃合で営業店を閉鎖し、コンビにATMのみ設置したり、マンションの脇に無人ATMコーナーを設置したりしている。
人通りの多いところではさほど問題はないにしても、人通りも少なく、車のみ頻繁に通る場所に設置されたATM設置コーナーは見るからに犯罪の温床になるようなところも少なくない。
そんなATM設置コーナーの十数メートル手前で、人通りが少ない歩道を和人は歩いていた。
そこは、いつも利用客が多くないATM設置コーナーであった。
そのATMコーナーに現金を下ろしに来たひとりの7・80代のご婦人がいた。
右手には買物をしたのか食料品が入ったスーパーの袋が、左手には女性物のハンドバックを持っていた。
ATMが設置されているそばに、ニット帽を被り顔にはマスクをした男がいた。
中肉中背で、さほど体力的に勝っている容姿ではなかった。
まるで防犯ビデオに写らないように外のコーナー隅に立っていたのである。
その男がいつからそこに居たかは定かではない。
現金の出入や振込に来た様子もない。
7・80代のご婦人がATMコーナーに入って数分後に自動扉から出てきたときである。
右手の肘にスーパーの袋をかけており、同じように左手の肘にハンドバックがかけられており、右手には財布がさまに現金を入れ終えたような状況で握られていた。
その財布を左手のハンドバックに入れたときである。
7・80代のご婦人は財布を入れることで、周りの状況を確認していなかった。
入る時には確かに男が立っていたことは気が付いてはいたが、いつまでもそこに居るとは思ってもいなかったのである。
財布を入れたその瞬間、その男が突然脇から、7・80代のご婦人が持っていたハンドバックを引ったくったのである。
7・80代のご婦人は、あまりにも突然のことなので瞬間声も出せなかった。
でも我に返った7・80代のご婦人は引ったくり数秒後、震える声で弱々しくも叫んだのである。
「泥棒!!」
その近辺を歩いていたのは和人のみであった。
そんな叫び声を聞いたときには、既にその男は和人の2メーターほど手前にまで近づいて走り過ぎようとしていた。
和人は突然の判断で、右脇を走り過ぎようとしている男の着地した右足を、天性の反応で足を引っ掛けるような
下段回し蹴りを放ったのである。
強烈な下段回し蹴りを見舞われた男は、足をすくわれたような形でその場にもんどりうって転んだのである。
強烈な下段回り蹴りと転んだ時の衝撃で、男はすぐに立ち上げれなかった。
傍には女性物のハンドバックが落ちていた。
和人がそのハンドバックを拾い上げた時、痛みをこらえていたその男が、ハンドバクをまた奪い取ろうと和人に向かってきたのである。
和人はサッと
寄りを使い男との間合いを詰め、
左正拳突きを人中に一発見舞ったのである。
「グチャッ!」と言う音と共に、男はその場に膝から崩れ落ちるように倒れこんだ。
口にはめたマスクからは赤い血がにじんで出てきた。
前歯の2・3本が折れたであろうか。
強烈な一撃で脳震盪を起こし、気を失ったのである。
別の方面から歩いた来た男性2名に、7・80代のご婦人が助けを求め、一緒に和人が男を倒した現場に来たのである。
倒れている男の容姿と和人が持っていたハンドバックを見て、この男が引ったくりの犯人だと告げた。
2人の男性の一人が、即刻携帯で110番に電話をした。
和人は持っていたハンドバックをご婦人に渡した。
ご婦人は受取ったバックの中を見て、財布とその中身が無事であることを確認した。
男性2人はその男を取り押さえた。
和人は、ご夫人に怪我がないことと財布が無事であったことを確認しその場を去った。
やがてパトカーがサイレンを鳴らしやって来た。
その男は引ったくりの現行犯で逮捕されたのである。
甲野善紀の驚異のカラダ革命