和人はサラリーマンとして、新宿駅で中央線に乗って通勤している。
人の乗り降りの多い新宿駅には同時に色々な人がいる。
会社への通勤途中で、新宿駅中央線ホームに上がる階段でのことである。
ラッシュアワーの時間帯である。
多くの人でごったがいししていたホームに上がる階段途中で、和人の前の階段を上がっていたご婦人がいた。
その反対側からは、すれ違いにホームから階段を下りてくる中年男性がいた。
その中年男性は、肩からカバンを下げた背広姿で、外見はごく普通の中年男性であった。
その中年男性は、何かつぶやきながら階段を下りてきていた。
すれ違いざまに人と肩がぶつかっては、小言ではあったが何か怒りの声を上げていた。
その怒りが頂点に達したのか、はたまた自分の行く手を遮られたためか、多くの人の上り下りで混雑していた階段のところで、ちょうど中年男性の前に上ってきたご婦人のお腹をすれ違いざまに殴ったのである。
ご婦人は突然の暴力行為に、「ウムゥゥゥゥ!!」と言う悲鳴にもならないうめき声を出し、殴られたお腹を抑えてその場にかがみ込んだ。
和人も突然の事で、しかも一部始終を見ていたわけではなかったのでいきさつが分からなかった。
しかしながら、殴られたご婦人がうめき声にもならない状態からふり絞った声で、
「ウム、痛たィィ!」
「何するのォォ!!!」
和人はその声を聞いて何が起こったか察した。
そして和人は、脇を行過ぎようとしているこの中年男性の背広の後ろ襟のところを捕まえたのである。
中年男は後ろから捕まえられたため、階段にしりもちを付くように座り込んだ。
この中年男はそれでもまだ何かブツブツ言い放っていた。
「何と言うことをするんですかァ」、と言って和人はこの男を叱責した。
男はそれでも反省することなく、捕まれていることに逆切れし、和人に向かってくるように立ち上がろうとした。
天性の武道家である和人は、右手に回り立ち上がろうとしてきた男の右手背後に
「短刀取り」のようにサッと回り込み、
男の後ろ首を抑えながらうつ伏せにし、右手首を背中側に回しねじ伏せた。
痛みをこらえ、やっとのことで立ち上がったご婦人が、「この男が、突然ぶって来たのよ!」
と言って事実を周りにいた人々に告げた。
この騒ぎにようやく気が付き、3人の駅員がやって来た。
ご婦人の訴えに基づき、和人は3人の駅員この中年男を引き渡した。
ご婦人の怪我に大きな痛手がなかったことを確認し、和人は会社への通勤のため電車に乗ったのである。
朝っぱらから、やな奴はいるもんだ!
宇城憲治師に学ぶ心技体の鍛え方