私の運命はが大きく変わったのは、5年前の秋だった。
それまで普通に日本で家族と暮らしていたが、
ある日なにかの小さな諍いで、
家を飛び出した。
所持金もあまり持たず、
自分のものかも確認していないパスポートを握って、
関西空港行きの電車に飛び乗り、
飛行機は当日キャンセルが入ったところにぎりぎり入って、
一人身でフランスへ渡った。
私は飛行機のなかに自分を追いかけてくる家族がいてないか、
終始気が気でならなかった。
窓から見える神戸の明かり、
これで日本とはしばらくおさらばだ、
と、
ぼんやり考えているうちにうとうとと眠りについてしまった。
昼間のような強い太陽光で目が覚めた。
もう成層圏に達しかかっていた。
今はロシアの上空を飛んでいる
というテロップが前の席のモニターに流れる。
と、
同時に自分はなんてことをしてしまったのかという、
不安を感じた。
機内食を出されて、
食べはしたものの、
フランス語を話せもしないのに、
この先どうやっていきていくか心配になって、
あまりおいしくは食べられなかった。
まわりをよく見渡してみると、
隣の乗客は
日本に出張に来ていたフランス人の1人旅行者だったらしく、
私と同じように1人で機内食を食べていた。
食事も終わり、
モニターに映っている洋画をぼんやりと見つめていた。
すると、
機内のCAが飲み物を勧めに廻ってきた。
そのとき、
私はいろいろ考えごとをしていたので、
いりませんという意思表示もこめてうつむいていたが、
その人は英語交じりのぎこちない日本語で、
「あなたもAppleジュースどですか?」
私はびっくりしたので、
一瞬戸惑ったが、
その人の好意を無駄にはできなかったので、
「いただきます、」
とCAに伝えた。
私は軽くその人にお辞儀をした。
その人とはそれをきっかけに少し話しをした。
名前はシリウスといって、
日本の企業に就職していて、
今回は出張がたまたま母国になった、
とのことだった。
出張、というわりにはなぜか私服だったが、
今はそういうのもありなんだろう
と思ってそのまま話を続けた。
シリウスが簡単に自己紹介をしたように
私も軽く自己紹介をした。
名前は、親がつけた名前を名乗ると
飛び出してきた意味みたいなものが
なくなってしまうような気がして、とっさに
「凛です」
と嘘を言ってしまった。シリウスは
「いい響きの名前ですね」
といった。
私は何故ここにいるのかを大雑把に話し、
これから先の生き方に困っている、
というふうに話した。
シリウスは私の今までの経緯を聞いて
少しびっくりしているようだった。
でも、否定したりすることなく、
むしろ私のこれからについて提案してくれた。
シリウスは
パリの少し市街地から離れたところに、
老舗のバーがあって、
そこの店主と長い付き合いがあるから
紹介してあげるよ、
といってくれた。
私はそれが本当の話なのかどうかも
疑わずにお願いをした。
しかし、その店で働くことによって私の人生は大きく変わったのだった。

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