僕には5歳より以前の記憶が無い。母が父を殺そうとし、自殺した事件よりも前の記憶が。僕は僕が誰なのか見つける為に、真相を探ろうとする男と共にあの事件と向かい合う。本当は何が起こったのか? しかし調べていくうちに、再び犠牲者が・・・。(講談社文庫)
『○○○事件』や地名シリーズの作品で知られる太田先生のデビュー作です。裏表紙には青春本格ミステリーとありますが、まさに思春期にいる中学生の、自分を探していく過程と結果を綴った物語です。作者自身による文庫版あとがきによれば、”中学生がこんな難しい考え方をするわけがない”という批判が多かったそうです。自分はそうは思いませんが、中学生の一人称の言葉には思えませんでした。よく描けているのでかえって気になってしまいます。作中には密室の謎なども登場しますが、メインとなっているのは最終的に現れる1人6役でしょう。『シンデレラの罠』のようにそれを前面に押し出し、トリッキーに扱っているわけではないので、不自然でない分インパクトも薄く感じられます。全体を通して青臭いイメージがつきまといますが(そういうのが苦手な方には合いません)、自分はそこが気に入っています。特に結末など強く印象に残るものです(なかなか恥ずかしくてこうは書けない)。ノスタルジックでない青春ものが好きな方に。