TV放映で初めて見たので、感想を書きたくなりました。
ストーリーをぶっちゃければ、少女が恋をしてすったもんだの挙げ句にハッピーエンド。
テーマと言うか、作品の言いたかった事は「年を取っても、女性なら恋をしよう」かな?っていうか、それしか読み取れなかった。
時代背景には戦争とかなんとかあるけど、それはもうホントに「ただの背景」。実際に描かれているのは主人公の少女ソフィーとカッコいいイケメン魔法使いハウルのラブストーリー。しかも少女ソフィーは冒頭荒れ地の魔女の呪いでおばあさんにされてしまい、そんなおばあさんでさえハウルは恋をする、と言う、まあ、そんな感じ。
脇を固めるのは、ハウルの弟子マルクル。宮廷魔術師のMrs.サリマン。サリマンの使い魔の犬ヒン。カカシのカブ。そして火の悪魔カルシファー。
カルシファーはハウルと心臓を使った契約を結んでいて、ハウルとは長年行動をともにしている。
マルクルはハウルの弟子として住み込みをしてはいるが、ハウルの作るマジックアイテムを販売しては買い出しを行っている。
荒れ地の魔女が結構「よくわからない人」。冒頭、ソフィーの帽子店に来ていちゃもんを付け、むかっ腹の立ったソフィーに呪いをかけ、物語が動き出すきっかけを作るのだが、そもそも「なんでソフィーの店に押し入ったのか」がよくわからない。ソフィーとハウルの出会いのきっかけとなった影の様な物はサリマンの手の者だし・・・。
わざわざ鍵のかかった店に押し入って文句を付け、店員(ソフィー)を怒らせては呪いをかけるというのが・・・。
もっと判らないのがサリマン。宮廷魔術師として、戦争遂行にはかなり積極的に関わっている割にはラストで「馬鹿げた戦争」と言ってみたり、自由を望む魔法使いたちを宮廷から追放してみたり呼び寄せたり、力を奪ってみたり。彼女の行動原理がさっぱり判らない。
魔法使いを統制したいのだろうか?であれば、ラストで戦争を終わらせようとする意味が無い(話を終わらせると言う事以外に)。あれではハウルが従わないのも宜なるかなと思うが、そもそも愛弟子という割に母親の事を全く知らないというのも如何なものか。ハウルの叔父も魔法使いだったのであるから、面識位はあって良さそうなものだけども・・・。
それからハウルと師弟関係にありながら、偽名であるジェンキンス、ペンドラゴンの正体に気づいていないのは・・・。
尤も、話自体は「ソフィとハウルのラブストーリーしかない」ので、その他の部分については「かなりどーでもいい」様。言ってみれば「ヤオイ」。ヤマなし、オチ無し、イミなし。この脚本を宮崎駿が書いたというのは俄に信じがたいものがあるけれども・・・。
正直酷評に近いけれども、女性の支持を得ているのはよくわかる。もしもここまで計算ずくで制作されたのであれば天才という賛辞を惜しまないけれども、実際の所は「偶然の産物」なのだろうと思う。計算ずくなら荒れ地の魔女やMrs.サリマンのキャラクターをもっとしっかり描いたはずだから。
この二人が完全に「ラブストーリーを進める装置の役割しかになっていない」のがとても残念。
それから、一番気になったのは「黒煙」の描き方。とても嫌悪感を持って描かれており、ハウルの持つ戦争への抵抗感に共感したくなるようになっている。が、これまでの宮崎作品、ジブリ作品で描かれるこう言う「ガジェットへの止めようのもない愛情」からはどうにも「過去の自己(宮崎駿)の完全な否定」を感じる。
ナウシカで描かれたガンシップやコルベット。ラピュタで描かれた飛行艦やタイガーモス、フラップター。紅の豚で描かれた水上艇たち。未来少年コナンで描かれたギガント。ルパン三世で描かれたアルバトロス、シグマ、オートジャイロ。過去の作品ではこれら「嫌悪すべき兵器(人殺しの道具)への愛情がにじみ出ており、宮崎駿という人の屈折した情動がこれらのガジェットに言いようもない魅力を醸し出していた。しかし、ハウルの動く城では戦艦やフラップター?達への愛情が一切なく、過去作品ではあったガジェットへの愛情はまさに「ハウルの動く城」のみに注がれている。
これは旧作のファンとして、存在を否定されてしまったようで凄く寂しい。
ただ、事前に聞いていた声優に関してはそれほど問題ないとは思う。確かにソフィーの声は少女として考えるとちょっと老けている。それはまあ仕方ない。しかし、あのように年齢がほとんどシームレスに上下するソフィーというキャラクターでは、いかんともし難いのではないだろうか。せいぜい若い頃の声にデジタル技術で変調かける位の事しか出来ないのでは(ただ、それをしたのでは何の為に声優を使うのかという根本的な問題が発生してしまうが)。確かにベストではないかも知れないが、ベターだったのでは。
他に、極端に下手な役者もいなく、全体としてはバランスはとれていたと思う。
欠点を挙げれば確かに沢山でてくるかも知れないが、それでも公開当時ボロクソに叩かれていたほどではないだろう。特に「中高年女性対象の作品」なので、それ以外の観客からは面白くも何ともないと思うが。
実際にはこの作品は「中高年女性に『私にもキムタクの様なイケメンと恋に落ちるかも!』という夢を見せてくれる」、そう言う作品です。それ以外の観客が見ても面白くも何ともないでしょう。そう言う点では決して駄作とは言えないけれども、「少なくとも傑作じゃねーよなー」って・・・。