●HELLHAMMER / Demon Entrails(3LP) CENTURY MEDIA
今年出たメタル・ヴァイナルの中でも、いや、世の全音楽ファンにとって、ぶっちぎりの最重要アイテム。このブログの読者には今さら説明の必要はないだろうけど、『Death Fiend』『Triumph of Death』『Satanic Rites』の3本のデモ音源が、ついに正規アナログ盤でリリースです。これらの音源についてはこれまでチャチいブートCDが沢山出されていたが、正真正銘、これが決定版。HELLHAMMERの音を聴くのにこれ以上のフォーマットは存在しない。まずはこの極厚ゲートフォールド・スリーブ(ユニオンの外袋に入らない!)の存在感に手が震える。さらにでっかい写真を載せた分厚いブックレットを音を聴きながらめくっていくと、高級な洋書のアート写真集でも見ているような気分になってくる。お値段もそれなりだが、HELLHAMMERのアナログ盤にそれだけの金額を出せる人間だけのための、ひとつの踏み絵のようなレコードだ。その代わり、関門をくぐり抜けた人間には至福の時間が待っている。
今までブートCDで何度も聴いてきたはずの音も、アナログならヤバさ10割増し。爆音で聴いていると完全にやられる。以前にも書いたが、実はHELLHAMMERの音楽は、ヘヴィメタルでは全くないロウなガレージィ・ロックンロール。それでいてどんなハードコアよりも凶暴で、どんなスラッシュメタルよりもストロング。アナーキーインザUKみたいなリフやDISCHARGEみたいなリフもあったり、色んな意味でプリミティブ。本当に凄いアーティストが、20年以上の時を経て世に出した、本当に凄いレコードです。
→今回のために作られたスペシャル・サイト。(連続試聴できます 。)
●GARLIK DE'TH / While God Sleeps(LP) LYDRERHORN
これは凄い!80年代後期から90年代初めに活動したノルウェーのスラッシュメタル・バンドということだが、オスロ等の大都市から離れた土地で活動していたというだけあって、まさに孤高のサウンド。非常にテクニカルでアヴァンギャルドな印象を受ける。これをスラッシュと呼んでいいのか。グラインドコアの初期にいきなりDISCORDANCE AXISが出てきたような、スラッシュメタルの初期にいきなりMETALLICAのOneがリリースされたみたいな強烈な違和感。BOYのレビューでは日本のDOOMを引き合いに出してたけど、音楽性は相当高い。枠組みとして相当狂った音。O.L.D.のジェームス・プロトキンがリマスターしているというのも凄い。O.L.D.の打ち込みになった後の音とか狂ってて好きだったなー。
→貴重なライブ映像。
●HELLCHILD / Where The Conflict Reaches(CD) RITUAL
友人に借りました。この人たちも当時は普通に凄いかっこいいデスメタルバンド、みたいに扱われて評価されてたけど、今聴くと、隙間のある奇妙なデザインの音がやたらアヴァンギャルドで、あまりデスメタル的なカタルシスがない。そこがクセになるというか、これもまた違和感メタルの秀作。
●GLORIA DIABOLI / ST(7") PAINIAC
カナダ、エドモントンのブラックメタル・バンドの06年のデビュー作。演奏力はかなり高く、こもった音質の残虐なギターが凄くかっこいい。スタイルとして特別なところはないが、音全体からかなりヤバい香りがする…。2曲しか入っていないが、これはもっと聴いてみたい。
[追記]
どうやらあのRITES OF THY DEGRINGOLADEの別プロジェクトらしい。さすが異様な存在感なはずだ。この後ミニアルバムを1枚出して活動停止中とのこと。RITES OF THY DEGRINGOLADEの前身はカナダのカルト・サタニック・スラッシュWITCHES HAMMERで、現在メンバーはカナダに移住したバングラディシュのWEAPONに、ボーカル以外総入れ替えの形で加入してやっているらしい。面白い動きをする人たちだ。
●CRUELTY / Marching in Blood("7) LEGION OF DEATH
ブラジルの首都ブラジリアで一瞬活動したオブスキュア・スラッシュ・メタル・バンドの86年の伝説の?大学ライブ音源。オフィシャル録音は全く残さなかったらしく、わずかにこの時収録されたビデオの3曲のみが一部のヘッドバンガーの間で話題になっており、それをレコード化したのがこれだそうです。ビデオテープというのは実は優れた音声記録媒体でもあるのだった。ブラジル初のデスメタル・バンドとも呼ばれているらしいが、何をやってるのか全くわからない凄まじくノイジーな演奏に客の怒号。ひたすら怒号。メンバーがSLAUGHTERのTシャツを着てるのがポイント。手書きナンバー入り限定300枚。
●BESTIAL RAIDS / Order Of Doom(7") BLIND OF ILL OMEN/NUCLEAR WAR NOW!
ポーランドのウォー・ブラック。かなり前に買って聴いて、全く印象に残っていなかったので、ブログに書いたら少しは記憶に残るかなと思って聴き直してみた。ウォー・ブラックってだいたいそうなんだよな。案の定展開も糞もないドシャドシャなウォーブラックでした。でも聴いてる時はそれなりにかっこいいなと思ったりもする。…やっぱ苦手だな。
●CRAWLSPACE / Enter The Realm of Chaos(CD) FINALBEATDOWN
レーベル名とジャケで完全にどんな音かわかってしまう、まさにモッシング・デスメタル。初期はNYHCスタイルのバンドだったらしいが、もはやビートダウンの要素を取り入れたブルデス、と呼んだ方がいいような音になっている。ハードコアの要素が残っているのは、メンバーにロン毛がいないところと、辛うじて歌詞がタフガイ風なところぐらいか。メタルサイドからこういう音にアプローチしてる連中もいるし、逆もいるわけだが、前者に比べると何かが足りないような気もする。しかしピットではさぞかし威力を発揮するのだろう。MySpaceで聴けるNYHC時代の曲は相当かっこいい。
→MySpace
●JAWS OF LIFE / Slime Time(7") Carte Blanche
モントリオール産、血管ブチ切り系のボーカルがリードする速くて軽いオールドスクールハードコア。しかしギターが刻んでたり、ユースクルーっぽいブレークや泣きのリフメロもあったりと幅が広く、いつの時代のどんなスタイルと言えない熱いUSAのハードコアで素晴らしい。これでセンターラベルの袖なしネルシャツに星条旗とビールを持ってメンチを切ってるスキンズの写真がもしメンバーだったら、このバンド、マジで信用できる。
→MySpace
●THE DEAD END BOYS / Boys In The City(7") MALFUNCTION
ボルティモアの、見るからに汚いスキンズの親父たちがやっている、一言で言うとスピードアップしたOiパンク。しかし、異様に生っぽい録音、アメハー的な軽くて汚いがさつな音にしゃがれまくったボーカルが、けっこうありそうでなかった感じ(MySpaceには「サイコビリー」と書いてある)。しかも曲調をよくよく聴くと、Oiと言うよりは実はオブスキュアな70'sパンクロックの要素も強かったり。聴き進むにつれ懐の深さが見えてきてどんどん良くなる。ボルティモア面白いなー。
→MySpace
→レーベルのブログ
●ALONE IN A CROWD / ST(CD) ATOMIC ACTION!
友人からトレードで。今まで聴いたことなかった'88ユース・クルー・バンド。SIDE BY SIDE、UPPERCUT、BREAKDOWN、KILLING TIMEのメンバー参加のある意味オールスター・バンドで、録音もDon Furyスタジオとくれば、完全な王道。当然音触とかは相当渋いけど、曲調や演奏はちょっと今の自分にはストレート&普通過ぎてあまりピンと来なかった。これももっと聴き込もう。
→MySpace
●DETESTATION / ST(LP) SKULLED/PROFANE EXISTENCE
なぜか今頃初めてちゃんと聴いたバンド。ミネアポリス産、元RESIST(懐かしい!)、後にDEFIANCEやSEVERED HEAD OF STATEに流れるメンバー在籍ということで、まさに90年代以降のアメリカン・クラストの本流。スタイルとして何ひとつ特別な部分はないけど、演奏の気迫とハートは確実に伝わってくる。女性ボーカルのバンドはやっぱりいいです。最近ではこういう音は全く追っかけなくなったけど、今でもいいバンドはいるんだろうな。本気の連中は絶対いなくならないから。
→MySpace
●JOE BIRD AND THE FIELD HIPPIES / The American Metaphysical Circus(LP) COLUMBIA
久々にこんなの聴いたな…。グループ名からしてモロなドサイケ・レコード。一応女ボーカルの歌ものロックを軸に、ミュージック・コンクレートの手法で色んな音声や飛び音を重ねてみたりする構成なんだけど、擬似宗教音楽っぽいドローン・サウンドに始まって、ベースがブンブン唸るヘヴィ・ロックに突入、また飛び音を挟んでソフトロックっぽいフォーキー・バラード、ラーガっぽいコード展開に合唱団、吹奏楽、ミュージカルみたいなコーラス曲…といった感じであらゆる要素が盛り込まれていく。かなりとりとめがないが、構成はよく考えられてるし、音楽的なレベルも相当高くて、聴いてて楽しい。ヒッピー音楽のいいところは、現代で言うところのDJ的な感覚があるところだなと。最近こういうの掘ってなかったけどまたぼちぼち始めてみよう。
●TONY D / Music Makes You Move Volume One(LP) SURE SHOT
オールドスクール〜ミドル期に活躍したラッパー兼トラックメイカー/プロデューサーの89年の作品集。フィラデルフィアのレーベルから出ているが、本人はニュージャージーの人らしい。インストがほとんどだが、YZ、TOO KOOL POSSEなどのラッパーも2曲参加している他、本人もラップしている。全然知らなかったが、JUNGLE BROTHERSの1stにも曲を提供していたとか、DJ SHADOWが絶賛したとか、MUROがBLASTのオールドスクール特集でレア盤20枚の中にこのLPをセレクトしたとか聞くので、結構重要な存在なのかも。王道ネタ感の強いサンプルが中心で、テクノ/エレクトロ的な上モノにフルートを合わせたり、当時としては不思議な浮遊感のあるトラックが色々並んでいて、かなり興味深い内容。面白いのは、マンチェスターのGRAND CENTRALレーベルと古くから交流を持っていたらしいことで、何げに後のマンチェ・サウンドにも影響を与えたんじゃないかと思ったり。
●K.M.C. KRU / Gettin' Smooth With It(LP) CURB
ラッパーのT THE SARGEとDJのTHE BUTCHERからなるミシガン(!)のヒップホップグループ。お揃いのグレーのとっぽい衣装(カーディガン風おっさんブルゾンにハイネックセーター。)とは裏腹に、針を落とすと90年産とは思えないファットでストロングなビートとミドルっぽいガチガチしたラップが飛び出してくる。「おっ。当たりか?」と思ってるといきなり2曲目はヒップハウスっぽいバンバンピアノに高速アパッチビート。その後も、たぶんポップでアーバンなことをやろうとしてるらしい、とりとめのない曲が続く。はっきり言ってダサい。しかしそれでも全然聴けてしまうのは、やっぱりこのラップのおかげ。逆にラップが入ってないところは退屈で死にたくなる。聴く人が聴けば駄作に聴こえるんだろうけど、こういうのこそオブスキュア・ヒップホップの醍醐味だよな。
●LITTLE BEAVER / Party Down(LP) CISCO/東芝EMI
●MILTON WRIGHT / Friends And Buddies(LP) ALSTON
今はそうでもないのかも知れないけど、ちょっと前まで世の中のソウル・リスナーには二種類の人たちがいた。一方は、昔ながらの硬派なソウル・ファン。もう一方は、DJによるダンス・ミュージックとしての再解釈やネタものの延長としてのレア・グルーヴを通過したいわゆるクラブ世代以降の若い連中。「フリーソウル」なんてよくわかったようなわからないようなブームもありましたね。前者は後者に対して「ケッ。基本も押さえないで大したことないB級のレコードを有り難がりやがって。踊れりゃいいのかよ!」という苦々しい思いを抱き、後者は「うるせえなあオッサン!ようは気持ち良くてフロアで使えればいいんだよ」と開き直る、という図式があったわけです。
僕自身のスタンスは、前者と後者のちょうど中間というか、どちらでもないという感じなんだけど、そんな自分にとってマイアミ・ソウルというのはちょっと苦手な存在なのだった。少し軽薄でわかりやすく、しかも音はファットでダンスミュージック的にもフックがあって、言ってみれば余りに後者寄りのマーケットにハマり過ぎてる気がするのだ。マイアミがリゾート地だってのもあるかも知れないけど、なんかやたら夕日を想像する余裕のある黄昏れ感とか、ちょっと黒人音楽本来の渋さとか深みが足りないんじゃないかなあ、と思ってしまうのだった。
このLITTLE BEAVERのレコードは、いわゆるフリー・ソウルブームの当時に出た日本盤で、MILTON WRIGHTも同時にリリースされていた。どっちもなるほど、という感じの音で、やっぱり上記のようなことを考えるとなんとなくすっきりしない気分になってしまうのだった。
でもかっこいい音楽には違いないので、この2枚を繰り返し聴いて耳を慣らしてるところなのでした。どっちも名盤。
●TERRY CALLIER / The New Folk Sound of Terry Callier(LP) PRESTIGE
そういえば今までなぜかこのブログで取り上げてこなかったけど、この人は本当に凄いです。いわゆるフォーキー・ソウル。ケニー・ランキンとかもそうだけど、こういう変な世界で定番になり過ぎてるものって、自分のような天の邪鬼な人間には照れがあって、なかなか良いと言いにくい。しかし良いものは良い。絶対にギターとベース1本ずつだけで演奏してるとは思えない、厚みと深みのあるバックに、同じぐらいディープな表現力を持つボーカルが乗る。全く時代を感じさせない、聴く者を陶然とさせる時空を超越したサウンド。この前ブリティッシュ・フォークのコンピに聴いた耳でまた聴き直してみると、手法や文脈的にも色々新しい発見があった。
●THE REVOLUTIONARIES / Drum Sound - More Gems From The Channel One Dub Room - 1974 To 1980(LP) PRESSURE SOUNDS
70年代ロッカーズ・レゲエの牙城、CHANNEL ONEスタジオのErnest Hoo Kimが、プロデューサー(バンマス)を務めるセッション・バンドが、THE REVOLUTIONARIESである――みたいなことをわざわざ書くのもこのブログだと久々な気がするんだけど、そのもう一方のリーダーであるSly Dumberのドラムに焦点を当てたシンプルで太いダブ・トラックをPRESSURE SOUNDSがコンパイル。このコンセプトが見事に当たって、素晴らしいコンピレーション・アルバムになっている。リマスタリングされた最高のハイファイ・サウンドと高クオリティのアナログ盤が、圧倒的な自由さとストイシズムを併わせ持つリズムを際立たせ、聴き慣れたはずのトラックを新鮮に響かせる。最近ロッカーズ・レゲエに食傷気味だった自分にとっては、かなりタイムリーな作品だった。ジャケのSlyとHoo Kim(ちょっとジャッキー・チェンに似ている)の2ショットもかっこいい!
●DJELIMADY TOUNKARA & L'ORCHESTRE SUPER RAIL BAND INTERNATIONAL/ Allo Bamako(LP) ORIKI MUSIC
フランスの気鋭のアフロ・ポップ発掘レーベルが出した、西アフリカ・マリで60年代から活動してきたギタリスト、ジェリメディ・トゥンカラと彼のバンドRAIL BANDの音源。サリフ・ケイタやモリ・カンテが在籍(!)していたということもあって、近年評価が高まってきているらしい。ジェリメディ氏は最近はビル・フリゼルのセッションに参加したりもしているとか。4ツ打ちなどのシンプルな反復リズムの上で漂うように立ち現れてくるギターと歌。リヴァーヴの効いたギターは自由自在に弾きまくり、時々かなりの速弾きもかます。何とも言えないクールネスと幽玄の空気感が最高にかっこいい。当時のマリのポップスは政府の国策に沿って作られていたらしいが、一体どんな国策に則ったらこういう音になるんだろう?
→レーベルMySpace
●ORCHESTRA HARLOW / Heavy Smokin'(LP) FANIA
FANIAの中心人物の中でも強硬なキューバ音楽原理主義者のラリー・ハーロウのかなり若い頃の録音('68年)。グァラーチャとグァグァンコーを中心とした、あくまで伝統的なスタイルにこだわったセッション。資本主義文明の爛れた硬質なエロティシズムを写し出すジャケ(かなり後の時代のものか?)とは裏腹に、心は陽光に目がくらむキューバの街頭へ、ビーチへと飛ぶ。ボーカルのFelo Britoの伊達男っぷりは、スローなチャチャチャの「オルケスタ・ハーロウのテーマ」やバラードの倦怠感に満ちた美しさに花開く。
>JOE BIRD AND THE FIELD HIPPIES
そんなのも聞くんだね。
うっかりうちにあったのを引っ張りだして聞いてみました。
最近ヒップホップやダンスミュージックのフォーマットに乗っていないサンプリング音楽を聞きたいと突然思ってたんだけど、ヒッピー音楽を探してみるといいのかもしれないと気づきました。
でも、とりあえずはサージェントペパーズとかペットサウンズを聴き直そうと思っています。