イスラエル、米国−イランとの応酬続く
イスラエルが六月初旬、イランの核関連施設破壊を想定したとみられる大規模軍事演習を実施したことを契機に、米国を巻き込んだ双方の非難の応酬が続き、激化の様相を見せている。軍事衝突の可能性が原油高騰の一因にもなっている。イランは、イスラエルを射程内に収める弾道ミサイルの実験に踏み切った。
(エルサレム・阿部正寿、ホド・ベンツビ)
弾道ミサイル実験を実施−イラン
年内に攻撃の可能性も−イスラエル
イスラエルの大規模軍事演習を報じたのは六月十九日の米紙ニューヨーク・タイムズ。米政府高官の話によれば、「F16やF15戦闘機、計百機以上が、六月の第一週に、ギリシャ上空などで、イスラエルからイラン核施設までの距離とほぼ同等の長距離攻撃訓練を行った」という。ヘリ部隊も空中給油機を伴って参加し、救援訓練をしていたことなどから見て、イラン核施設への爆撃を想定した訓練とみられるとしている。
イスラエルのモファズ運輸相は六月六日、イスラエル紙で、「イランに核兵器の製造技術を持たせないための国連制裁は失敗した」と断言、「対イラン攻撃は不可避」と明言した。
それに対し、イランのナッジャル国防軍需相は、十日付イラン国営紙を通じて「イスラエルがイランの核問題をめぐり攻撃を仕掛ければ、強い苦痛に満ちた反応を伴うだろう」と応じた。また、イラン革命防衛隊の上級司令官は六月二十五日、米国に対し、イランを攻撃した場合は「悲劇」に直面することになるだろうと警告した。
それに対し、ペリノ米大統領報道官は二十五日、ブッシュ大統領はイランの核問題を外交的に解決できると考えていると述べた。
ところが同月二十八日、革命防衛隊のジャファリ司令官が、イランが軍事攻撃を受けた場合、「ペルシャ湾とホルムズ海峡を統制するのがわれわれの行動の一つとなるだろう」と語り、原油の輸送を妨害する意向を表明した。同司令官はさらに、レバノンのイラン系イスラム教シーア派武装過激派組織ヒズボラを用い、イスラエルを攻撃する可能性も示唆、世界中の米国の権益に攻撃を加える可能性にも言及した。
イランのアラグチ駐日大使は二十七日夜、東京都内での報道陣との懇談で、欧州連合(EU)が独自の経済制裁発動を決定したことについて、「圧力はイランの核開発を加速させる」と警告した。
一方、三十日付クウェート国営通信KUNAは、同国国営のクウェート石油会社(KPC)のトップ、サード・シュワイブ氏の話として、クウェートは、イランの原油輸送路遮断に備えて準備を進めていると報じ、緊急事態発生の場合の対応を急いでいることを明らかにした。
米国務省のケーシー報道官は一日、イスラエルのイラン攻撃をめぐる国防総省高官発言を批判した。同高官は、イスラエルがイランを攻撃するタイミングについて、イランが核兵器製造が可能なほどの濃縮ウランを保有した時だとし、それが年内ないし二〇〇九年になるとの公算を示していた。
一方、米海軍幹部は二日、「米国は、イランによるペルシャ湾封鎖を認めない」と警告を発した。それに対しブッシュ大統領は二日の記者会見で、「すべての選択肢はテーブルにある」として、武力行使の可能性を残しながらも、「第一の選択肢は外交的に解決することだ」として、外交優先の姿勢を強調した。
緊張の高まりを見て、米国の制服組トップのマレン統合参謀本部議長は二日、イスラエル軍によるイランの核施設攻撃は支持しない、との姿勢を鮮明にし、イスラエルを牽制した。
イランのアハマディネジャド大統領は八日夜、クアラルンプールで、「わが国を攻撃することはブッシュ(大統領)にとって自殺行為になる」と述べ、ブッシュ政権を牽制した。
イラン革命防衛隊は九日、長距離弾道ミサイル「シャハブ3」一発を含む九発のミサイル発射実験をペルシャ湾で実施した。同湾では四日、米英の艦船が軍事演習を始めていた。
射程二千キロとされるシャハブ3は、イスラエル全土を射程内に収めることから、イスラエル攻撃の能力所持を内外に誇示する意図があったものとみられる。同防衛隊は、イスラエルが六月初旬に行った「対イラン核関連施設攻撃演習」への対抗措置であるとも表明した。
米ABCテレビは一日、米国防総省高官の話として、イスラエルは、イランがロシアからの防空システムSA20を配備する前に、攻撃したい意向とされ、年内の可能性が高い、と報じており、予断を許さない。
(本紙掲載:7月12日)
http://www.worldtimes.co.jp/w/me/me2/kr080712.html
なんと世界日報w