At the Crossroads / Barrel House Story
Barrel House Story

Caprice vol. 3
by Masahiro Satoh
「カプリスのアンプ」
11月か12月に入って間もない或る日、私は初めてギターを持ってカプリスのドアをくぐった。前にも書いたが、ギターの練習はほとんど会社でやるのでギターは会社に置きっぱなしだ。家にギターを持って帰るのは特に家でコピーしたい曲がある時ぐらいなもんだ。
お正月には必ず持って帰る。そうしないとなんだかギターに申し訳ない気がして・・ ・。
しかし、特にお供えをあげるような事はしない・・・。その日は正月ではなかったが、とにかくギターを持っていた。
カラ〜ン・・・。
『いらしゃいませ〜・・オヤ こんばんは。』(マスター)
『いらしゃいませ〜・・あら こんばんは。』(ママちゃん)
『あ こんばんは。・・あっこんばんは。』(私)
最初の『こんばんは』は、マスターとママちゃんに、後の『こんばんは』はカウンターの向こう側、いつもの所に座っている谷さんに言ったものだ。
谷さんは私がカプリスに行った時はたいてい居る。座る場所も大体おなじだ。私はドアを入ってすぐ前のスツールの1個左側に座る事が多い。ついでに言えばここは『シロー君』の場所だ。シロー君が居て、谷さんが居ない時は、私は谷さんのスツールに座る。(ここは中々良い席だ。2個左隣に大抵ママちゃんが座っているからだ。)
谷さんの1個右側のスツールにはこれまた常連の木村さんが座る。シロー君が居て、谷さんが居て、木村さんが居るときは、私は座る場所がない。仕方ないのでその時はカウンターの真中に座る。
カウンターは馬蹄型なので、一番膨らんだ場所にあたる。ここは、壁の『クジラのシッポ』のポスターを背中にする位置なのであまり好きではない。
まぁ 適当に好きな場所に座れば良さそうなものだが中々そうは行かない。どうしても好みの場所というのは決まってくるもので、そこじゃないと文字通り、すわりが悪い。
とにかく、今日は谷さんが居てシロー君が居ないので私はシロー君の席に落ち着いた。シロー君が来た時は私の左側に座るはずだ。
『おやぁ〜、今日はギターを持ってきたネェ。一曲聴かせてもらえるのかな。』
『イヤ、チョット、今日は家に持って帰ろうと思いましてね。それで・・・。』
『まぁ〜たぁ〜・・・。勿体付けないで聴かしてちょうだいよぉ・・。』
『イヤイヤ・・いやとんでもない・・・・。』
『そぉ〜ヨォ、聴かしてよォ サトさぁん・・・。』
『イヤイヤ・・いやとんでもない・・・・。』
とか何とか言って私は時間稼ぎをしております。本との所、今日はカプリスに置いてあるアンプの調子を見たかったのです。
キーボード用だと思うが、かなり古そうな物だ。(実は、この記事を書く前にこのアンプを調査して、微に入り細に入り事細かに報告しようと思ったが残念ながらお店の模様換えのドサクサに誰かにやってしまったらしく取材は出来なかったのである。残念。)時間稼ぎをしているのは理由がある。ギターを出したくないからだ。
この冬の時期、空気が比較的乾燥しているのでギターを持ち歩くにはいいが、外から暖かい店内に持ち込んですぐケースを開けようとは思わない。結露するからだ。こういう所に私は神経質だ。逆の意味で、梅雨どきにギターを持ち歩く気になれない。一回や二回結露したからと言って、即ギターがどうにかなるとは思わないがとにかく気になる。
貧乏人がやっと買ったギターだ。私のギターは世間一般からみて、決して高価な部類に入るギターではないが、金額の問題ではない。気持ちの問題だ。
さて、アンプの話だが。私のギターは基本的にアコースティック・ギターだが、一応クリスタル・ピックアップがサドルの下に埋め込まれていて、それ用のプリ・アンプ とバッテリーが搭載されている。通称エレ・アコと呼ばれているヤツだ。そのままでも音は出るがやはり細かな音はアンプを通した方が良く聞こえる。聴く人(たとえば観客)にもよく聞こえるが、何よりも演奏者自身が良く聴きたいと思っているのであ る。
余談になるが、ほとんどの楽器の演奏者はその演奏を聴いている人よりも音が聴こえていない。耳の位置の関係による。又、多くの楽器は演奏者よりも『相手』に向かって音が放射するように作られている。(と思う。)<だから演奏者用のモニターが要る。
私がギターの練習を自分の家よりも会社のエアロビフロアーでやるのもその辺の関係もある。ほかの楽器はほとんどやらないので(しかし、ホラは時々吹く)、一応ギ ターに限って言えば、和室6畳よりエアロビフロアーの方が音がイイのである。音が反響して良く聴こえるせいだと思う。
またまた余談だが、私はロバート・ジョンソンのLPを持っているが(CDではない)そのジャケットの絵は黒人(おそらくロバートのつもり)が部屋の壁、コーナーに向かって唄っている絵である。なぜそんな位置で唄っているのかは
1)テクニックを隠している。
2)自分の声、ギターを良く聴くため。
3)はずかしいから。(?)
等々、諸説あるが、私は自分の経験から 2)が正解と思うがどうだろうか・・・。
さてアンプの話だが、もしアンプを使うなら当然『はねかえり』と俗に言われるモニター・スピーカーが必要となる。ギターの音をアンプで増幅した場合アンプを自分の 位置より後ろ置いたとしても自分のギターの音が聴き取り難いのは変わらないからどうしても自分の方に向いているスピーカーが欲しくなる。
アンプがひとつでスピーカーが2個と言うシステムも可能だが、特にエレ・アコの場合ハウリングの問題が新たに出てくるのでモニター・スピーカーの音量を単独で調整したくなる。その関係でやはりアンプは2台必要となる。ここにボーカルも入ると更に 問題は複雑になる。
結局、弾き語りなら生ギター1本でやるのがバランス的には一番いい。一番カネもかからない。ところが、その場合は場所(演奏場所)の問題も出てくるのでやはりむ ずかしい。
カプリスは、お店の大きさについてはアンプなしで充分いけそうである。しかし、満席状態でお客がいる場合はやはり簡単なP.Aが必要だろう。(音響的には人間は吸音材の部類に入る。太った人であろうと、やせた人であろうと・・・。)しかし、セッティングによっては小さなミキサーがあればアンプ1台で充分イケル大きさである。
つまり部屋のコーナーにアンプを45度の角度で上向きに設置し、自分はそのアンプの前に部屋の中央向きに位置するのである。この場合、ボーカル用のマイクとギターは ミキサーに接続してその出力をアンプに接続する。音量バランスはミキサーの入力レベルで調整する。
聴く位置によりハイ落ちの音になりやすいがとにかくシンプルでいい。この場合、条件的にはアンプがボーカル・アンプである事が必要だ。一応キーボード・アンプでも何とかなるし、ベース・アンプでも仕方ないかな・・って所だろう。
エレキ・ギター・アンプだったら私は使わない。なぜか、と言う事は長くなるので割愛するが、好みの問題ではなく物理的(設計的)問題だ。
またまた話がそれるが、最近はアコースティック・ギター用(エレ・アコ用)アンプと言うものが出てきた。その音的な設計思想は知らないが基本的にボーカル・アンプにプリ・アンプ入力を別系統で追加したものである・・・はずだ。(入力インピーダンスがマイクと違う・・・・はずだ。)
それに、おまけのコーラスとスライド・ボリューム式のイコライザーがついているのが一般的のようだ。便利は便利だろう。基本的にボーカル・アンプだとすると物理 的(設計的)問題はないと思うので、どうぞお好みで・・・。
つづく