蒼野美希に見えるもの
血を流しゆっくりと倒れていく、丸坊主の少年
「ゆ・・・」
横腹に深く突き刺さった光の弾丸は、役目を果たし輝きを失った
「裕喜君ーーーーッ!!」
「チイイイッ!何じゃあの小僧は!余計な邪魔をしおってぇーっ!」
プリキュア暗殺が失敗に終わり、クラインは眉をひそめた
そこへ
「きっさまあーっ!」
大輔がヨロイナケワメーケの残骸から剣を取り出し、クライン目掛け投げつけた
「ひっ!」
情け無い悲鳴をあげながら、間一髪でクラインはそれを回避した
倒れこむ裕喜
美希が叫ぶ
「パイン!早くヒーリングプレアーを!!」
キュアパインのヒーリングプレアーにはダメージの回復能力と悪の力を浄化する力がある
パインが了解し、裕喜の元へ駆け寄ろうとしたその時だ
「ま・・・待ってくれ・・・動かないで・・・そのまま・・・」
「ゆ・・・裕喜君・・・」
「お・・・俺はもう・・どうせ・・・助からない・・・俺なんかの・・・ために・・・せっかくのクローバーを無駄に・・・しないで・・・
・・・か・・必ず・・・美希さんが・・・4つ目の光に・・・なりますから・・・」
裕喜の血色が見る見るうちに失われてゆく
「・・・ゆ・・・裕喜君・・・どうして!?どうしてこんな無茶をしたのよっ!」
「光が出なくて・・・苦しんでいる美希さんを・・・見て・・・いられなかった・・・なんでもいいから・・・力になりたかった・・・
その時・・・こ・・・この武器が美希さんを狙っているのに気付いたんです・・・お・・俺しかその気配に気付いていなかった・・・だから・・・」
「だからって・・・!あたしの代わりに食らう事ないじゃない!こんな・・・最低の女に・・・
どうして君が死ななきゃならないのよおっ・・!!」
美希の言葉に裕喜は目を閉じ、涙した
「美希っ!」
堪らずせつなが声を荒げた
「ラブも鈍感だけど・・・あなたも相当なものよっ!沢君はね!誰よりも君の事を信じているの!!
・・・彼はあなたを本気で愛しているのよっ!!」
「!!!」
「・・・・ひどいよ東・・・いつか自分で言うつもりだったのに・・・」
「・・・沢君」
「・・・う・・・うそ・・・うそだよ・・・きっと一生真顔で言えなかった・・・俺・・・肝心なところで調子に乗っちゃうから・・・」
裕喜はか細い声で話した
美希さんがずっと好きだった
初めて見たときからずっと・・・
いつも完璧に振る舞っているけど、本当はとても努力家の人・・・
どんなに苦しくても・・・
どんなに怖くても・・・・
どんなに悲しくても・・・
最後の最後には必ず、努力と根性で乗り越えてしまう人・・・
いつも中途半端な俺にとって・・・
美希さんはずっと憧れの人だった
でも・・それが言えなかった
美希さんの・・・キュアベリーの傍に居たくて、無理に危ない場所にまでついていってしまうくせに・・結局自分の気持ちを伝えられなかった・・・
言えば今の関係さえも壊れてしまいそうで・・・それが怖くて・・・!!
そんな半端な自分が嫌いだった・・・
「でも誉めてください…
俺…初めて美希さんの役に立てたんです…」
「裕喜君…」
美希はみるみる冷たくなっていく裕喜の手を握りしめる
「はあ…はあ…」
裕喜の呼吸が乱れる
出血過多と、毒素が体中を蝕んでいるからだ
「もう…ダメです…目が…見えない…」
「何言ってるのよ!諦めちゃダメ!」
「…美希さん…俺の…最後のお願いを聞いて下さい…答えのわかってる…意地悪なお願い…」
「意地悪なお願い…?」
「あなたの…好きな人の名前を…言って…ください…」
「…え!?」
「…知ってます…その人が誰か…そして…俺じゃない事は…で…でも…あなたの口から聞きだい…そして…俺を諦めさせてほしい…」
「……。」
「…そうすれば…今度…生まれ変わったら…美希さんみたいな…勇気溢れる人に…なれるかも…しれない…」
「……。」
「がはっ…ごほ…ごほ…」
美希が答えを出すのに躊躇していると、裕喜はおびただしい量の吐血を出した
抱きかかえる首筋も冷たくなっていく
美希は意を決した
「…ごめん…裕喜君…あたしは…あたしは…」
「はあ…はあ…」
「和希が好きなのよおおぉっ!!」
響き渡る美希の告白
その直後
バアァァァァ…
美希の手の中から青い光が煌めいた
ブルンが輝いたのだ!
「どうして…どうしてブルンが…!?」
思えば彼女もそうだった
弟には何も言えなかった
結局、姉と弟の関係のままだった
今の関係が壊れてしまうのが怖くて…
深く踏み込めなかった…
美希の心の力は『勇気』だったのだ
「あたしも…裕喜君と一緒だった…和希や…みんなから仲間外れにされるのが怖くて…」
美希は裕喜に光り輝くブルンを示す
「ほら…!あたしのブルンも……!!」
腕の中の沢裕喜は、既に息絶えていた

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