旧パラを検証する17
第二号5
「私の考へ方(詰将棋の解き方) 詰棋狂生」・・・文字通り詰将棋の解き方を初心者向けに書いてあるつもりのようですが、解き方として虱潰ししてゆくやり方が書いてあるのですが、初心者がそんなことまでして解くとは思えない。私が思うに手数が短いものから(極端な場合一手詰から)始め、最初はプロの啓蒙作品で、それが解けたら将棋雑誌に載るような作品を解くとか、段階的に進むべきだと思うんですけどね、、、。
続いて「ヘタの横槍」の最新版が載っている。前掲のは昔の復刻ですが、今回の記事は終わったばかりの名人戦を槍玉に挙げる過激な内容となっています。
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最新版 失礼御免 ヘタの横槍 前田三桂(七十三才)
パラダイス有難うございます。仲々立派なものです。老人も永い間棋界と遠ざかって居りましたが、御誌の出現でぼつぼつ昔の勇気が出て来ました。老いらくの恋は出来ませんが、天井裏から錆びた横槍を取り出して、老いらくの槍でも揮う事にしましょうか。どうせ物笑ひの種を蒔く位がオチかも知らんが、この世の思ひ出に、せいぜい張り切って、痩せ腕に撚りをかける事にしよう。
扨説、いよいよ本題に入る。
錆びた横槍に磨きをかけて、棋界の耳目を聳動させよう。それには古いものでは興味が御座らぬ。
ホヤホヤのつき立て、先日行はれた木村名人対大山八段の鮮血醒き最新の名人挑戦棋へ一本突き出す事にしよう。
棋譜は皆さんよく御存知故省略するとして、終りから十五手前、木村名人が一三飛と打ち大山八段が二三銀打と合駒をした時である。
それが次の図面で、ここの棋譜は朝日新聞の三月三十日付第九譜に掲載されている。
図は大山八段 二三銀打の局面

ここで名人はノータイムで▲二一飛と打ち大山△三五金。
観戦記を見ると、大山の△三五金に木村思はず「そんな手があつたか、さあ、さあ、さあ。」驚きは口先だけのようだ。
とある。
すると木村としては、二一飛と打つたのは即詰に気が付かなかつたらしい。尚消費時間はこの時大山は一分を余すのみだが、木村は十二分を余している。
△三五金以下、▲三五同香△同馬▲三六歩(三分)△同馬▲四二馬△同玉▲二二飛成△三二香▲六二金△四四銀▲五二銀(一分)△八七歩▲同金(一分)まで、
一三三手にて木村名人の勝となっている。
消費時間 木村 九時間五十三分
大山 九時間五十九分
木村七分を余している。
さて前に戻り、木村の一三飛に大山二三銀合の時、木村十二分を余すのに、勝と見て自重したのか、同飛と取れば即詰だのに何を恐れたのか大事を取つて、二一飛打などの弛緩した手を指して居る。
▲同飛と取れば△同玉の一手。此処で▲二一飛打てば△二二飛合▲同飛△同玉▲二一飛△三三玉▲二二銀打△三二玉▲三三歩打△二三玉▲三一銀ならず△三三玉▲二二飛成
迄にて詰み。猶最後の一手も亦詰抜けで、これは観戦記でも指摘し、右の詰手(最後の一手)を逸したのは、画竜点睛を欠いて惜しい。と三象子も云うているが、一三飛打、二三銀合の処は何にとも云うて居ない。
まことにはや。ハツハツハ。失礼御免。
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やはり、今読むとそんなに面白くないですね。ただ時代背景として、名人の価値が今と比べ物にならないほど高くて、神のように崇められていた時代だということと、詰みを逃すのはプロとして恥(今でも恥でしょうけど、今は危険な詰手順より簡単な必死という時代ですから)という意識がとても高かったのだと思います。
結局旧パラは復刻版のみならず、新しい「ヘタの横槍」を載せたり、プロの詰将棋の質や余詰に関して厳しかったので、顧問の板谷八段が降りざるを得なくなるのですが、それはまだ先の話です。